あの夏、いちばん静かな海。という北野武監督作品の「名作」をご存知の方は多いと思いますが、なぜこの映画が評価されているのか?なぜ名作と呼ばれているのか?について探っていきたいと思います。

あの夏、いちばん静かな海。の特色とあらすじ

1989年に深作欣二(ふかさく きんじ)監督の降板により、プロデューサーの奥山和由(おくやま かずよし)が「スケジュールに沿って好きに撮っていい」という事で進められ初監督作品となった「その男、凶暴につき」から、作中で流れる音楽を一切廃して日常音だけで構成されたという特徴を持つ1990年の公開された第二作目のバイオレンス映画「3-4×10月(さんたいよんえっくすじゅうがつ)」に続き、翌年の1991年に公開された聴覚障害者の青年とその恋人との物語を描いた第3作目が「あの夏、いちばん静かな海。」です。1作目の「その男、凶暴につき」でも元々あった野沢 尚(のざわ ひさし)の脚本を大幅に変更して、台詞を大幅に削いで少なくしていった北野武監督の作風は、3作目になる「あの夏、いちばん静かな海。」でも今作で起用された久石 譲(ひさいし じょう)の作り出す音楽と映像で、登場人物の心情や出来事を表す今作にも受け継がれ、印象深い北野武監督らしい恋愛映画となっています。物語のあらすじとしては聴覚障害者の青年「茂(真木蔵人)」はゴミ回収の仕事をしながら日々を暮らしていた。
ある日茂は折れたサーフボードを拾い、そのサーフボードを発泡スチロールで修繕して、同じ障害を持つ彼女「貴子(大島弘子)」を誘い海へ向かう。
その後、茂はサーフィンにのめり込むが、サーフボードは壊れてしまう。
しかし茂は新しいサーフボードを買い、更にサーフィンに没頭していく。
やがて、茂を馬鹿にしていた地元のサーファーも没頭している茂を見直すようになり、上達した腕前で大会での入賞も果たす茂。
そんな茂を恋人貴子は浜辺に座り、いつも眺めていた。
ある日いつものように貴子は海にやってくるが、そこに茂の姿はない。
そこにあったのは、波打ち際で漂う茂のサーフボードだけだった。
貴子は「茂が海で死んだ」という事実を悟る。
その後貴子は茂のを持って海に向かう。
そして、海にはそのサーフボード漂うように浮かんでいた・・・。
というものです。                 

あの夏、いちばん静かな海。の特徴

この3作目「あの夏、いちばん静かな海。」は恋愛映画でありながら悲劇的なラストを迎えることになるのですが、そこに台詞での確定的な説明は一切なく、映像と音と音楽で「何が起きたのか」を見ている者に理解させる作りになっています。
また、北野武は役者としてはこの映画には登場していないませんが、この映画では、その後の北野映画の音楽を数作担当する久石 譲(ひさいし じょう)を起用していますが、北野側からの打診が久石にあった際、久石はコンサートツアーの予定があり最初は断ったものの、北野側からはヶ月待つという決断を下した事に元々北野映画の1作目と2作目が好きであった久石は感銘を受け、この映画音楽を引き受けたといいます。
その後、「通常、音楽が入る場面から全部、音楽を抜きましょう」という提案を北野武から受け、久石も賛同するものの実際どういう音楽を付ければよいのか困ったというエピソードがあります。
更にラストシーンで流れる「Silent Love」という楽曲は久石の音楽の中でも好評を得ている曲ではありますが、製作の段階では映画のサブテーマとして作られ、それを北野武が気に入って、この映画のメインテーマとして使われたというエピソードがあります。
その後、数々の北野映画に使われた久石の音楽ですが、座頭市(2003年)からは久石が音楽を担当していない理由として北野武は「音楽の方が有名になってしまったから・・・」(久石の音楽が印象深過ぎてしまう事をいっているものと思われます)といった趣旨のコメントをしています。
また、この映画から撮影に柳島 克巳(やなぎじま かつみ)が起用され、後の北野作品の映像的特徴ともいわれる、画面全体のトーンに青が頻繁に使われる影像色「キタノブルー」が生まれます。
この「キタノブルー」という映像色は2001年に公開された BROTHER までつづき、翌年に公開された映画Dolls ではキタノブルーの傾向は薄れています。

あの夏、いちばん静かな海。の評価

北野映画としては、暴力描写のない恋愛映画として話題を集め、映画解説家・映画評論家として著名な淀川 長治(よどがわ ながはる)さんからも「ビートたけしという人は、お年寄りのことを馬鹿にしたりするので嫌いだったが、この映画を観て考えが変わった、一度会いたい」とまでコメントされ、絶賛されました。

まとめ

あの夏、いちばん静かな海は、 北野武監督 映画作品として 見ると「 余分なセリフをそぎ落とした 脚本」「 役者に過剰な 演技をさせないシンプルな 演出」
といった他の他の作品でも見る特色はあるのですが、 それ以上にこの映画を おすすめする理由というのは 「 第一級の切ないラブストーリー作品」 であるというところです。